障がい も 年齢 も
超えた絆で
笑顔がきらめく
子どもの中で、子どもは育つ
変わらない信念を胸に、“一人ひとりが自分らしく生きるための支援” を続けています。
障がいがあるなしに関係なく、どの子も秘めている素晴らしい力を引き出し、
その子らしさを伸ばすことを目指すことで紡がれる、絆と笑顔!!。
障がい児との共同保育、
たてわり、24時間
私たち社会福祉法人「路交館」は、大阪市を中心に保育・教育・療育・福祉と、幅広い支援を続ける中で、障がい児との共同保育 1)×「たてわり」保育 2)を実現。障がいのある子もない子も、年齢が上の子も下の子も共に生活することで、子どもは子どもの中で育っていくという信念を体現し、近年注目を集める “インクルーシブ保育” 3)を先進的に展開してきたパイオニアと自負しています。
その始まりは1972年。元は幼稚園だった聖愛園に2名の障がい児を受け入れた 1)ことにさかのぼります。この障がい児受入れを機に、障がい児との共同保育や、様々な個性の子どもたちが集まって遊ぶ “はらっぱ” をイメージした「たてわり」保育 2)、夜間保育所 5)などにいち早く取り組んできました。
障がいのある子もない子も、異年齢の子も…様々な子ども同士の関わりが教育・保育をより豊かにし、大人も子どもも育ち合える場所を生みだすと、今日までの確かな実績のなかで、そう確信しています。
このような路交館が運営する3つの保育施設(障がい児の共同保育を先駆けた聖愛園 4)、24時間の保育を実現する豊新聖愛園 7)、豊中市にて民間移管を受けた北丘聖愛園 6))から、子どもたちと成長を続けている3名の若手保育教諭に、路交館独自の保育が生むつながり、そして、そこで働くやりがいを語ってもらいました。
湧き上がる思いを胸に
福島からの挑戦――
「NHKのプロフェッショナル―仕事の流儀」 8)で聖愛園 4)を知り、衝撃を受けたと話す “まっぴー”。「番組で聖愛園の保育の様子を見て、グループ内のケンカを5歳児が先頭に立って話し合い、子どもだけで解決していく姿に感動! 障がいのある子ない子入り混じる3~5歳児が、7、8人のグループになって生活する中で育まれる “生きる力 ”9)を目の当たりにして『ここの保育に挑戦したい』と…。『やらないで後悔より、やって後悔しろ』という恩師の言葉にも背中を押され、すぐに聖愛園に連絡し、その1週間後、福島から大阪へ飛び立ち、採用面接を受け、2017年4月に入職しました」。
「印象に残っているのは、一人でごはんを食べられなかった子がいたときのこと。同グループの子に自然と思いやりや助け合いの心が生まれ、一緒に食べようと誘ったり、食べ方を教えてあげたり…子ども同士でその子の問題に立ち向かっていて…その子がごはんを食べられた瞬間には、グループ皆で大歓声!ごはんを食べられた子は皆の歓声から、できた実感、自信を得て、周囲の子は思いやりや、一緒に頑張り達成する喜びを学んでいます。まさに子どもの中で、子どもが育った瞬間でした。異年齢の子、障がいのある子ない子…発達が違う子が入り混じっていることが、子どもが考える機会、違いを認め合い、互いを思いやる機会につながっているんだと実感する毎日です」。
家族のような温もりの中で
必要とされる喜びとやりがい
「豊新聖愛園は、0歳~小学生の子どもと保育者が共に生活する24時間の夜間の認定こども園。大家族のような温もりある園です!」実習で同園と出会い、園の温かい雰囲気に心魅かれた “キノちゃん” は、アルバイトを経て2015年に入職しました。「路交館では、保育士から園長先生まであだ名 10)があります。先輩も後輩も、大人も子どもも関係なくあだ名 10)で呼び合うのは、子どもと対等に接する姿勢が表れた私たちの特徴。そのおかげか、職員同士も、子どもとの関係もすごく温かいんです!一日を通して関わる保育なので『おふろに入れた!』『私の側で安心した寝顔を見せてくれた!』など、他園では経験できない感動もたくさんあるんですよ」とのこと。
看護師、飲食店経営…様々な背景を持つ保護者とのつながりも温かいと “キノちゃん” は話します。「お迎えが子どもの就寝時になることもある当園。そんなタイミングで、保護者の方と子育てについてじっくり話し込むことも。そのためか保護者の方とのつながりも深くて…。以前、保護者の方から頂いた『ここが無かったらどうしてたんやろなあ』という言葉が今も心に残っています。ひとり言のように発せられたこの言葉から、私たちの保育が『無くてはならないものなんだな』と実感できて…すごく嬉しかったですね。誰かの力になれている実感がやりがいにつながっています」。
子どもの声に耳を澄まし
促す保育の鍵はチーム力
「路交館で大切にしているのは、子どもの声。耳を澄ませていると『子どもってここまでできるんだ!』など、子どもに学ぶことも多いんですよ」と、北丘聖愛園 6)に2014年入職の “ハナちゃん” は話します。
問題が起きたときに保育者が手助けをする際にも、先生として指導するのではなく、子どもと同じ目線で話し合い、促していくのが路交館流。「以前、私のクラスで発達に遅れのある子が園に馴染めないという問題がありました。同グループの5歳児が助けてあげようとお世話をしていたのですが、グループの輪にも入りたがらず…登園時に泣く日々。どう促していけばいいか悩んでいました。そこで、BL会議(月2回、各クラスのリーダーが今起きている問題や悩みを共有し、経験ある先輩のアドバイスや園での事例をもとに職員みんなで解決を目指す場)で相談したんです」。「その会議で『その子自身ができることは、時間がかかっても手を出さず見守るようにしてみたらどうか』とアドバイスをもらって。グループの子とも話し合い、見守るようにしたところ…できることが増えるにつれ、その子に自信がつき、気後れせずにお友達と遊べるようになったんです!
会議以外でも、先輩後輩、クラスの垣根がなく会話が多く、職員みんなで拾った子どもの声を共有し、今の子どもに大切・必要なことを園一丸となって考えています。そんなチーム力が、路交館の保育の要です」。
みんな違って、みんないい
違いが生みだす育ちと笑顔
路交館にとって、障がいは個性のグラデーションの一つです。様々な個性の子どもが入り混じるなかで、子どもたちは互いに刺激し合い、育ち合います。
お友達とケンカする、グループに馴染めない子がいる………
問題が起こったとき、子どもたちだけで考え、話しあい、問題に立ち向かうことで、自分で判断する力、課題解決力、コミュニケーション力、行動力が育まれる。自分ができることを、できない子がいる、自分より年下の子がいる…その関わりが思いやりや優しさを自然と育みます。その全てが、“生きる力” 9)につながっていきます。
そんな路交館の保育の鍵が、“温かさ” であり、“チーム力” です。職員全員が “子どもの声” を拾い、共有し合いながら、その子らしい成長の支援をすることで、子どもたちは子どもたちの中で育っていきます。
路交館では、誰もが「障がいのある子ない子…みんながいてくれるから、私たちはたくさんの学びと喜びに出会える」と声をそろえます。
・子どもも大人も、園にいる全ての人が、互いにとって欠けがえのない存在になれる保育。
・大人も子どもも、その子らしく活き活きと笑顔になれる保育。
そんな路交館の保育に興味を持った人は、ぜひ園見学でその保育を目撃してほしいです。
1) 「障がい児」共同保育:
元は教会立の小さな幼稚園でした。1972年に母親らが、障がいを持つわが子を健常児と一緒に育てて欲しいと訪れてきたのがはじまりでした。
当時は、「障がい児は専門の施設で」、「家の中に囲い込む」というのが一般的な考えでしたので、職員たちも教会の人たちも「障がい児」に対する知識は皆無で、受け入れるか相当悩みましたが、「目の前のこの子どもを差別してはならない」との思いで受け入れたのでした。
参考にする例も無く、試行錯誤を繰り返す中で、「障がいがあるから」と特別扱いしているより、子どもたちに一定任せている方が、障がいを持つ子も持たない子もイキイキとしていることに気づかされました。
こうして、「子どもの中で、子どもは育つ」を実感し、「障がい児と一緒の保育こそが真の保育」として、今に続く路交館の保育を築いてきました。
「障がい児」共同保育の中で得た「子どもの中で、子どもは育つ」を基に、様々な個性の子どもたちが集まって遊ぶ “はらっぱ” をイメージしてはじめたのが3,4,5歳の「たてわり」保育です。今では、1,2歳も「たてわり」です。
3,4,5歳の「たてわり」は、5歳児をリーダ/サブリーダとして7, 8名のグループで活動をします。
新年度、3歳児はグループ内の関係性ができていないので泣きじゃくったり、自由気ままに行動したりと、慣れないリーダの5歳児がチームをまとめようとしますが、まとまりません。
このような様々なトラブルの度、保育者が答を与えるのではなく、一度立ち止まりながら、子どもたちと一緒に悩み、考え、成長していくの路交館の「たてわり」保育です。
「新年度はトラブルだらけでも、6月の一泊保育を終わった後には、5歳児はリーダとしてグループをまとめた自信に満ち溢れ、3,4歳はリーダと共に一泊保育の達成感にあふれ、目が輝いています」と報告する保育者の目も輝いています。
「生きる力」を育んだ子どもたちですから、とてもパワフルで、一緒に過ごしているとこちらまで元気になれるような、そんな力をもった子どもたちばかりです。
3)インクルーシブ:
「障がい児」共同保育をキーワードとしてきましたが、近年「インクルーシブ」をキーワードとするようになりました。
障がいの有無だけではなく、どのような背景を持つ子どもも大人も、誰も排除しないという概念です。
奥の深いキーワードです。しっかりと身に着けるため、法人全体で学びを深めるための研修を行っています。
大阪駅にも新大阪駅にも30分程度の淡路。駅から5分の住宅地の中にあります。
元は教会立の小さな幼稚園でしたが、障がい児2名を受け入れたことから1975年に社会福祉法人「路交館」を設立、保育所「聖愛園」となりました(2015年に幼保連携型認定こども園に移行)。
夜間の認定こども園「 あすなろ 」、地域子育てセンター、学童保育「つくし」クラブなどを併設しています。
5)あすなろ(夜間保育):
路交館の活動の基本は、「もっとも困難な立場に立たされている子どもや大人に眼差しを向け、これらの人々に寄り添う」です。「障がい児」の次に「困難な立場に立たされている子ども」として、夜間に保育を必要とする子どもを考え、1984年に聖愛園に併設する形で夜間保育所「あすなろ」を開設しました(2015年に幼保連携型認定こども園に移行)。
時代に先駆けた開設だったので、認可されている夜間保育所があるという認知が進まずに苦労しましたが、着実に夜間保育のノウハウと自信を積み重ねてきました。
新大阪駅より電車で北へ10数分の千里中央駅から徒歩10分の緑豊かな住宅地の中にあります。
元は豊中市の保育所で民間移管を受けて、2005年に開設しています(2015年に幼保連携型認定こども園に移行)。
緑が多く、自然が豊かで園庭も広いので、子どもたちはのびのびと外で遊んでいます。
「たてわり」保育は他と少し期間が短くなっています。豊中市から移管された際、いきなり他と同じ「たてわり」保育にするのではなく、少しずつ「たてわり」の時間、そして期間を増やし、今となっています。
基本理念は路交館全体に共通ですが、その実施内容までを形にはめるのでは、それぞれの園の個性を大事にしています。
夜間保育所「あすなろ」が世間に認知されるようになると、今度は、利用希望者が多くなり必要としている人が入れなくなる事態となり、淡路駅の次、上新庄駅から徒歩5分の場所に大阪唯一の24時間保育所として2006年に開設しています(2017年に幼保連携型認定こども園に移行)。
昼間の保育は他と大きく変わりませんが、夕食、お風呂から就寝までは第2の家といえるような安心してゆったり過ごせる場所となります。
野島千恵子(あだ名はチェリーボンボン)は、聖愛園の前園長です。
2016年に放映されたこの番組では、同年4月、たてわり保育が一番混乱するこの時期の保育に密着取材して作成されたドキュメンタリ番組です。今でも、保育養成校で教材として授業で利用されているところがあります。
これを見れば、路交館の「たてわり保育」がわかり易くなるでしょう。YouTubeで検索したら、今でも見れるかも知れません。
9) 生きる力:
「先生」として、どうするのが一番良いかを教えるのは、ある意味簡単です。でも、いつも「先生」として横についてあげられるわけではありません。自分で考える力、つまり「生きる力」を育てるというのが「たてわり」保育です。
「教え導く」という先生ではなく、子どもたち自身の育つ力を信じて、その力を発揮できるように支援するという保育者が必要なのです。
10) あだ名:
路交館のこども園では、子どもたちも保護者も職員を、ハナちゃん、キノちゃん、マッピーとあだ名で呼びます。園長も例外ではありません。チカちゃん、オーちゃん、トシちゃんと呼ばれています。
なにか軽い感じもしますが、「たてわり」保育スタイルによるものです。
子どもたち自身の育つ力を信じて、その力を発揮できるように支援するとき、子どもたちと同じグループの一員として本気で子どもとぶつかるために、あだ名で呼び合う関係が必要になります。
- このページは、キャリアフィールド社発行「ココキャリnote 2018年10月号」掲載記事を基に当法人で再構成して作成しました。
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